抹殺されるもの、若しくは現れないことの功罪−「存在の彼方へ」を読んでみる17/もぐもぐ
ヴィナスはこれを疑う。
勿論、既存の哲学にも「不可知論」であるとか「語り得ぬものについては、沈黙しなければならない」などという言葉もある。けれどもこれも、「語りえぬもの」を、それと名指ししている点で、「主題化」を免れていない。レヴィナスが探すのは、視界における「死角」「盲点」のような、原理的に見ることが不可能な場所のことである。
言葉において見ることができない場所とはどこか。レヴィナスはこれを「語ること」という言葉で指摘する。意識される「言葉」、耳で聞かれる「言葉」、文字にし書き残される「言葉」、は、全てではあり得ない。「言葉」は、発話している話者の身体、書いている者の身体を、舞台から
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