あたしの町へ/柊 恵
 

押さえれなくて
あたしは吐いた

今は小さな防風林
ママが子供の頃までは
そこは深い森だった


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「一二三…十一 十二…夏奈子!」

また呼び捨て。
あの人、何なの?

「一人足りない、いないの誰だ?」

目をあげ数える
苦味が残る口のなか


あれ?
瑞穂ちゃん…
「瑞穂ちゃんがいない!」

みんなくっつき歩いてた
四角い穴に落ちたのは
あたしの他に三人だった
その中に
瑞穂ちゃんは居なかった
あたしにしがみついてたのに…

穴の中を見回して
そこには誰もいなくって
お墓が あたしを見つめてた


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