虹の走り/蘆琴
 
ったら、新宿あたりにでも出て溢溢たる性慾を解放し、辺りに無償の愛をばらまき、代わりに快楽を受け取る方がよっぽど健全だと思った。「下らない! 若さは年寄りの慰めじゃない、墓石の手前でぐずぐずしながら過去を思い出す哀れな魂魄のための栄華でもない。おれたちの青春は、そういった屑どもを冥土に叩き込むための弾丸だ」と彼は呟いて、老人を射殺するような目で睥睨した。こちらはすがりつくように見上げて、瞳を湿らせている。

「おい、若いの」状況に合わぬ自信のある声だった。「知ってるぞ。お前さんの名前はツァラだろう、おぅ、本名だってな? どうみても日本人の癖に変な名をつけられちまったもんだ。哀れだよ。お前の前途を
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