虹の走り/蘆琴
途を巧く表現してるんじゃないのか、ツァラ」
虹色の雨が降りはじめていた。細かな水滴が、若いツァラのまだ新鮮さを保つ肌によく馴染んだ。通りには二人を除いて車も人もなかった。彼は、再び脚を上げ、靴のつま先で老人の頤を指して云った「あんたの頭を、汚泥のような脳髄を蹴り飛ばすことは簡単だが、やめとこう。いいか、いつでも殺せるんだぜ。ほっといたって五秒後には死にそうな耄碌じじいめ!」
ツァラが喉を震わせて叫んだとき、老人は五拍子のリズムで走り出した。その後姿は薄暗い虹だった。
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