中学受験の会場にて 【小説】/北村 守通
したかった。そして、今この場に居て、美しいエメラルドの底石達を目の当たりにできていないということが、非常に重々しく感じられた。
これだけの陽気ならば、魚たちも消化に必要なだけの体温を得ることができているだろう。そして滑らかな水面には体長一ミリにも満たないコカゲロウやユスリカ達が滑らかな輪っかを作っている筈なのである。その天上からの輪っかに重ねるようにして、魚たちもまた水面下からの輪っかを作った。私は冷静にそれらの中から自分に合った輪っかを選び出し、輪っかに合った色とサイズとステージのフライを投げ込むのだった。流されているフライラインの先で、やはり輪っかが下品な音と共に拡がるとき、私は緊張した
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