けふのうた(散文バージョン)/みつべえ
 


掟てられて人てふものの為すべきをなしつつあるに何のもだえぞ ※

口をついてでたのは、またしても牧水。今日はややネクラかもしれない。
定住生活が長くなってしまった。
旅にでよう、と少年が誘う。
社会的幸福という束縛を解きはなって。

いざ行かむ行きてまだ見ぬ山を見むこのさびしさに君は耐ふるや ※

なんだかんだラチのあかない思いを追っているうちに日がかげりはじめた。
結局、私の少年は稚拙なブンガク的修辞のうちに欲望を解消できる種類の人間のようだ。
代償作用としての芸術。玩具としての詩。

私は旅にでないだろう。だが一生旅立ちたいと思いつづけるだろう。

けふも
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