「忘れられる」ものとしての「信頼」−「存在の彼方へ」を読んでみる15(2)/もぐもぐ
取り残されると言うことができるのだろうか。それは、簡単に言えば、「信頼」は自らの意思によらないからである。
意思、は合理的な計算をする。あれこれ頭の中で計算を巡らせた上で決定を下し、よし、これをしよう、として、現実の行動に移そうと試みるのが意思である。意思は成功したり失敗したりする。意思の考えたことは、その意思が叶ったか叶わなかったかという結果により記憶され、喜びや憎しみを脳裏に植え付ける。意思によるものは、原理的に言って、悉く記憶されうる。
対して、「信頼」は無条件的なものである。それは人の「意思」によらない。何らかの他者との関係に入るとき、もし私が「意思」を動員して身構えていなけれ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(0)