「忘れられる」ものとしての「信頼」−「存在の彼方へ」を読んでみる15(2)/もぐもぐ
いるということである(床に危険なものが落ちていたり、食事に毒が混ぜられているということは、ホッブズ的な万人の万人に対する闘争からだけ言えば、幾らでもありうることである)。私たちは、無数の信頼の中を生きている。気づいてはいないが、恐ろしく多くの場面で、他者を無条件的に信頼している。だがその信頼は、必然的に、意識の上から失われていく。信頼は気づかれない。不信と闘争は、常に意識に上る。信頼と不信は共に同じような日常の不可欠の構成要素でありながら、何故か信頼は意識の上から欠け落ちていってしまうのである。
レヴィナスは、この「記憶から欠け落ちていく」「信頼」に気づかせるために、「記憶」(歴史)と「時間
[次のページ]
戻る 編 削 Point(0)