海の熱、鉄鋼の風/水町綜助
 
乱されるこの
髪一本のように些細で
かかわりなく
海と風は
ただ平然と荒れていた

僕がこの目に映る波濤に
長い一本
金糸を織り込んでいったとして
やがて薄暗くなりゆく海岸線にともる
小さなヘッドライトの光のようにそれは幻で
縫いとめることはできず
それでも僕たちは
波のように
海のように
かたちを変えることはできない
一度たりと
同じかたちに渦巻いたことが
ないのかどうかさえ
判断がつかないでいる
または
そのようにしている

  *

海岸線を
かすむ先まで
立ち並ぶ風車は
時差の中を回り
鉄鋼の町を動かし
鉄は
ときに重機関となっ
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