殺さないものとしての同族−「存在の彼方へ」を読んでみる15/もぐもぐ
まで言い切ることは、この命題の不当な拡張であり、虚偽である。他方、他人は信頼すべきものだ、というのも、一つの経験的命題であるが、信頼できない、信頼すべきでない他人というものもいる以上、「全ての他人を信頼すべきである」とまで言い切ることは、この命題の不当な拡張であり、虚偽である。ホッブズもレヴィナスも、その命題を文字通り取れば、何れも虚偽となる。
だが、これはレヴィナスの議論が「懐疑論」(p32)たる所以なのだろう。ホッブズの命題は、合理的な「論証」として圧倒的な威力を誇ってきたのであった(現代においてでさえ、殆どの憲法理論は、ホッブズの命題をその根拠としなければ説明不可能である)。個人の自由
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