殺さないものとしての同族−「存在の彼方へ」を読んでみる15/もぐもぐ
 
このように不信は、人間よりも機械の信頼、また弱肉強食の思想を、必然的に導く。
他方、他者は信頼すべきもの、「生かす」べきものである。「同族」としての他者、特権的に「感受」する者としての自己の主体性に気づくことは、人間の自然的なあり方である。みずからが傷つき苦しむことを引き受けること、即ち他者を「信頼」することによって、弱肉強食とは全く異なったあり方が自ずと開示される。


もはやこれは、「論証」などといったものを超えた、「信仰」による世界観の相違ではなかろうか。他人は信頼できない、というのは一つの経験的命題であるが、全ての他人が信頼できない訳でない以上、「万人は万人に対して狼である」とまで
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