殺さないものとしての同族−「存在の彼方へ」を読んでみる15/もぐもぐ
んだ」形のものとして作り上げる。そこにあるのは自分以外のあらゆるもの、或いは自分の初期条件たる「自然」への徹底した「不信」である。ホッブズは自然から脱した機械の世界を合理的に作り上げることの中にしか、人間の理想と可能性を見出すことが出来ない。それは自然の中でそれと調和して生きている他の生き物のようなあり方を認めない。人間は楽園から永久に追放され、蛇の智慧を以って人工の楽園を作り出さざるを得ないよう、徹底して宿命付けられた存在なのである。
人はこの、「信頼」と「不信」の間を常に揺れ動く。他者は信頼できない。信頼できるのは自分だけ。機械、こそが自然を退け、自分をその威力から守ってくれる。この
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