挫折の青/亜樹
ながら私は見ていた。私はもうすっかり絵を描くのは諦めて吹奏楽部に入っていて、誰も私が中学校のときに油絵の具で真っ白なスカーフを汚していたことを知らなかった。完成品を見せられる度に、感想を言うのに困った。他の子は、上手だね、とか、すごいね、とかそんな当たり障りのないことを言っていた。その子は少し自意識過剰なところがあって、それを全部鵜呑みにした。・・・美術の時間に聞いたピカソの伝記を「まるで私のことみたいだよね」と言い切った彼女の顔は、酷く猿に似ていた。
私はそんなこと言いたくなかった。なあなあの、薄っぺらい友情でその場に合わせて思ってもいないことを言うのが嫌だった。でも、直接何か言って角が立つ
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