雪のひとひら/小川 葉
この街は、なにひとつ変わっていない。そうして変わったのは、ひとなのだ。またそのような言葉が、脳裏を過ぎていった。「どうしてあの日、あんな約束したの?おぼえていないとでも言うの?」芙美子ちゃんは、泣いているようだった。「泣いてるの?」と、そんなとき尋ねてしまうのが、私の悪い癖だったけど、あきらかに泣いてしまっている彼女の前では、そんなことも言えやしなかった。「たしかにたくさんの、約束を僕はしてきてしまった。」そう言って、私は手紙を出した故郷のひとのことさえ思い出していた。約束なんて、いつだって気軽にできる。この街がいつもそうしてきたように、明日もまた会おうね、とさえ言えば、その約束は守られるの
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