雪のひとひら/小川 葉
美子ちゃんは美容院をひとりでやっていた。はじめて会ったのが三年くらい前だけど、その頃二十六歳だった。私は三十六歳の頃、職をうしなって、面接するために髪を整えに、芙美子ちゃんの美容院に行った。「あれからすぐに採用になってさ、芙美子ちゃんのおかげだね、すぐ忙しくなってさ、それからはもうあっというま・・・」言いかけて、芙美子ちゃんがうつむいてることに気がついた。「結婚するの。東京へ。」「じゃあ、お店は?」「父が亡くなったの。あの店も父の事業があったからこそ、できていたんだけれども、それにしてもひどい。大丈夫、心配しないでだなんて言ってたのに、あたしの店どころか、とんでもない借金をしていて・・・」
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