雪のひとひら/小川 葉
のコーヒーを飲むために、数キロ歩いて街まで出ることにした。
街は変わっていない。はじめにそう書いたのだが、やはり街はなにひとつ変わっていなかった。「変わったのはひとよ。」故郷のあのひとの声が聞こえる。そんなふうに、彼女の声を、この街で聞いたことなんてなかった。やはり、人が、私が変わっただけなのだ。マクドナルドで私はブレンドコーヒーを注文する。と、すぐ後ろの自動ドアが開いて、つめたい空気が入り込む。ふりむけば、そこには懐かしいひとがいた。「小川さん?」「芙美子ちゃん?」二人して階段を昇る。二階の席の、外のアーケードが見えるカウンターに座る。「お店、どうなの?」「来てくれないんだもの。」芙美子
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