雪のひとひら/小川 葉
どで、お金よりも暇がある私は、ある程度は慣れているのだが、それにしては驚いてしまった。
三百五十円。
しかしその程度の資金でも、私は休日の午後を存分に楽しめる自信があるのだ。まず古本屋へ行く。郊外の、寂れた街並みの、その本屋で、かならずポール・ギャリコが待ってくれている。案の定「雪のひとひら」が、百五円で、なおまた「ジェ二ィ」も百五円で、ちゃんと私を待ってくれていた。(「雪のひとひら」は、そのときはじめて知ったのだが、ページ数の薄い、はかない女のような本だった。)今日はどこか気持ちの良いカフェで、「雪のひとひら」を読もうと決めていたのだ。残り百四十円。しかたなく私は、マクドナルドの百二十円のコ
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