雪のひとひら/小川 葉
、男のひとはどう思うか知らないけれども。」そう言って娘はまた笑った。「ああ、あの分厚い本ね。このカバーには収まらないのではないかしら。」そう言うと、娘は「いいえ、やっぱりお読みになってないのね。お読みになったほうがいいですわ。あなたのような男性の方はとくに。」私はブックカバーを買って店を出た。仙台の街にはまだ、雪のひとひらはまだ降っていなかった。
ある休日、「ちょっと散歩に行ってくる。」、いつもの調子で気軽に出かける。財布には、家の者がいつもの調子で、多すぎず少なすぎないほどの資金を、何も言わずに入れてくれる。けれども、その日は給料日前ということもあってか、いや、それにしては、というほどで
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