雪のひとひら/小川 葉
使うわけではない、その革製の文庫本カバーを広げたり閉じたりしていると、ふとどこからともなくその娘がやってきて、「ポール・ギャリコ、お好きなの?」と、唐突にたずねるので、とっさに私はその文庫本カバーに挟まってる見本の文庫本が、それだと合点した。「ポール・ギャリコはどうかな。新聞記者が書いた御伽噺だなんて。矛盾も甚だしいと思うがね。」娘は苦笑した。本当は、ポール・ギャリコなんて知らなかった。けれど、あながち的外れではなかったようだ。きっとアメリカ人作家に違いないと思ったのだ。じっさい、当たっていた。「そのカバーに挟まっているのは「ジェ二ィ」という本だけど、「雪のひとひら」という作品がおすすめですよ、男
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