始終一環/土田
その台所では、秋田県勝藻郡裏町仏体字二水沢二一番地の畑で、お気に入りの丈のみじかい黄色い長靴をはき、よく見ると、きめ細かく幾何学的な模様が散りばめられた、とても場違いな、でも不思議といい具合に溶け込んでいる紺色の、だぼっとしたもんぺを身につけ、それしかないのか、と一度訊いてみたかったが、訊いてみたところで、お年玉が年二回にはなるまいと思い、けっきょく訊けずじまいだった何度洗っても落ちない誰かの血痕がへばりついた手ぬぐいをほおかぶりしながら、“あぁいでいで”と年中口走りながらも、なにに使っているのか家族の誰にもわからない、たぶんあり余っているであろうその年金を、午後二時のテレビショッピングに出てくる
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