始終一環/土田
 
くる、すこし頑張れば手が届きそうなマッサージ器に充てない、その極上の貧乏性をろ過した、観念そのもののような腰を軸に、もとから大きかったのか、それとも垂れて伸びたのか、十中八九見当のつく着やせすることのない乳房をゆっさゆっさえっさこらと揺らしながら、ときたま勢いがつきすぎてしりもちをついてしまう、そのどこから湧き出てくるのかわからない情念、いや戦時中に犬やすずめを獲って食っていたときの憶念、とも取れる、引力に逆らうかのような引力で引っこ抜かれた彼のりっぱな大根のように、とまではいかないが、ひょろっとした賢そうな大根が、はるばる数百キロ先から扮してきた不器用な土、それがまな板のど真ん中に照れくさそうにこびりつき、そこはまさに、祖母が眠る墓、そして墓の両脇にすえられた、瑞々しい白百合の花のように思え、上京してきたばかりの部屋にはけっして似付かない、因果で肥えた土のにおいに、定年まで町役場に勤めていた祖父の姿を思い浮かべたのは、それが初めてのことだった。


2008/1/1
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