十四年目、述懐/明楽
け
思い出せなくて余計不安になった
日が暮れてから帰宅すると
ニュースで長田区が燃えていた
街中が燃えていた
空爆されたよその国にしか見えなかったけれど
「長田区の上空です」をレポーターは繰り返した
その声が悲痛だった
今朝ポストへ投函した
手紙と葉書はどこへ行くのだろう
ルネ・マグリット展はあるのかな
そんなことより
神戸のあの子は
あの子は
どうなったんだろう
( その夜の気持ちは、覚えていない )
それからしばらく
のっそりとした気持ちが毎日だった
ニュースの度に流れるたくさんの名前
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