十四年目、述懐/明楽
前
気にしていないふりをしながら
こっそりとあの子の名前を探したけれど
見つからなかった
だから
あの子は大丈夫だと自分に言い聞かせた
でも どこかで
一ヶ月ほどした頃
あの子の学校の連絡先を
担任に教えてもらった
そこにあの子への手紙を出せば
そしたら
そしたら決まってしまう
あの子が
生きているのか
そうでないのか
決まってしまう
そう思うと
急に怖くなって
連絡先のメモも
安否を確認したい気持ちも
机の奥に押し込んで
そのまま
それっきりだった
* * *
あれから十四年
あの日
ポストに投函した手紙も
葉書も
あの子も
行方不明のまんま十四年
ねえ わたし
三〇歳になったよ
いなちゃんは
今 いくつなのだろう
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