夢のなか/アンテ
われた時間を夢で補っているのだ
というのが彼女の理論で
夢のなかではやけに時間の流れが早いのも
うまく説明がつく
学校にいる時間が
ぜんぶ夢ならいいのに
彼女がそう言ったのはとても強い雨の日だった
雨粒が地面にぶつかる音が
どうしてもうまくイメージできないんだ
本当はそう言いかったのに
出てきたのは違う言葉だった
学校の先生も授業中そんな話をするの
彼女はとつぜん笑いだして
いつまでも止まらなくなった
学校に行けないぼくのために
彼女は毎週五日
夕方から授業をしてくれる
さすがに体育や工作の時間はないけれど
テストだってあるし
絵の道具を持ち込んできた
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