雪/高杉芹香
 
ちょうど私の誕生日の頃、雪が降った。



大きなワゴンでやってきたきみは

車を降りて



不意に お母さんのことを話し始めた。




何年もそばにいたのに。

お母さんの亡くなったときの話するの、初めてだね。




『死んでからもう何年も経つのに

年々、マザコンになる気がするよ。

会いたくてたまらないんだ。』




そう言ってきみはうつむいて笑った。




きみの目が歩道に積まれた雪の塊を見ていた。



あたしはそれを避けて歩いた。





どうして

神様。





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