雪/
高杉芹香
こんな優しい子から
お母さんを旅立たせたの。
黙って握り返したきみの手は
ひどく冷たくて
細い指がさびしかった。
あたしの手もひどく冷たくて
きみに温度を移せずにいた。
雪道を走る車の音が大きく
ふたりの脇を通り抜けていく
その車のバックライトがやけに眩しかった。
何もことばが出ないあたしは
きみのお母さんのことを想った。
きみがさびしくないように。
きみが笑っていられるように。
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