サーカス/小川 葉
 
のを積み上げられて、動けなくなってしまったような、特殊な気持ちになっている。 誰もが人として産まれたらならば、道化師に出会ってしまうことだろう。そしていつしか、自らが道化師と化していることに、気づいてしまうことだろう。 サーカスは、そんな人のかなしみを、慰めるかのように人の心を昂らせ、またいつかの帰り道と同じ、郷愁を残して、去りゆくことだろう。手に汗握ったあの頃と、同じ掌を合わせて、祈ることをするのだろう。 わたしたちは、旅をはじめたならば、その道中、サーカスを逃れて進むことはできない。ロードムービーでさえ、その道中、いい大人が童心にかえってしまったら、そこにはいつも死がつきまとう。死んでおしまい
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