誰もを好きでいなければいけないのか/ブライアン
 
興味の湧かない国で、生きていく。これからも。髪を整えながら、考えていた。この、興味のない国こそ生まれた国だった。母も、父もいる、国だった。インタビュアーに答える60代の男性。こんな国にしたやつはみんなやめちまえばいい、と言う。それを聞いて、正当な憤りですね、とコメンテーターは言った。正当なのだろうか。ネクタイを締める。手に握られていた領収書を財布の中へしまう。眠かった。胃の消化不良は消えない。働く人々は、どこまで権利を主張するのだろう。正当な権利を。ただ、生きていたいだけだった。風を受けて。冷たさを感じながら。

 階段を下りる。革靴の音が響く。薄暗い、日の当たらない階段。冷たい空気に満ちてい
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