誰もを好きでいなければいけないのか/ブライアン
 
ている。マンションの管理人さんが、おはよう、と大きな声で笑った。答える。入り口の扉を開く。冷たい風が吹いた。排気ガスの混じった冬の風。朝の光は建物に反射している。緩やかな下り坂を歩く。誰もを好きにならなければいけないのだろうか、と思いながら。妻とお揃いのキーホルダーをポケットの中で握る。働く人々の権利。誰にも分からない、正当な権利のバランス。地下鉄の入り口に着く頃、妻は仕事場に着く。すれ違う人々。無表情だった。黙々と前進していた。改札を抜ける。電車はひっきりなしにやってくる。正当な権利を主張するため、財布を取り出す。領収書を破いてゴミ箱に捨てる。アルコールの匂いが口の中に充満していた。まだ、抜けて
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