喪失としての時間−「存在の彼方へ」を読んでみる13/もぐもぐ
 
づいて物事を考えざるを得ない。歴史に頼って物事を考えていかざるを得ない。思考は常に今現在において遂行されるものであって、現前する以外の思考などありえない、若しくは意味がない。思考されたものは表現されるべきである、それは文字に記されることによってこそ、普遍的に共有可能な思想若しくは知識となる。そして、そうした文字の記録の積み重ね、人類の英知の中から析出されてくるものこそ、物事の本質というものではないか。これらの営みを退けて、思考や文化に一体何が残されるというのか。これを退けることは、思想の自殺ではないか、人間文化の自滅ではないか、と。

「歴史」=「現前」の擁護は、完璧に論理的な立場から為され得
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