喪失としての時間−「存在の彼方へ」を読んでみる13/もぐもぐ
史〔物語〕によって、時間はどんな偏差をも回収してしまう。・・・過去把持、歴史〔物語〕があるおかげで、何も失われるものはない。そこでは、全てが現前し再現前する。・・・すべてが書き留められ、エクリチュールに委ねられる。ハイデガーならこう言うであろうが、すべてが総合され集約されるのだ。・・・全てが実体として結晶し硬化する」(p37)
歴史(記憶)=現前=エクリチュール(書かれた言葉)=実体、という認識がここには示されている。これは既存の哲学に対する、ある意味トータルな批判である。思考する主体が、意識に上る事柄に基づいて物事を考えている限り、それは歴史(記憶)に依拠したものにならざるを得ず、またその記憶
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