暴力と責任、若しくは<善悪の彼岸>−「存在の彼方へ」を読んでみる11/もぐもぐ
 
にも不条理な、死と破壊。全ての残酷性の支配者としての神。そのような神が、数多くの人々に畏怖と、それゆえの崇敬を与えたことは、私にはさほど不思議なこととは感じられない。

「神」はあなたが愛し、或いは執着している全てのものを、何らの理由なしに奪い去ることができる。数瞬前に愛や友愛を交わした親しき者は、不条理にも次の刻にあなたの目の前で打ち倒されていく。なすすべもない。その恐怖。怒りを抱く猶予も与えない、突然の打撃。

旧約聖書はその神との契約の書である。
時に、多くの者が、その神の威力に依拠して異教を打ち倒し、自らの繁栄を図るために、聖戦を遂行してきた。

だがレヴィナスは、そのような
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