軽蔑/鈴木
 


 六月の日は長く彼女が明るい
 ミネストローネをすする
 むき出しの鎖骨に至る汗ばみとスプーンの刃に付着したままのわずかな赤
 がじとり同じように光り
 きのこスパゲッティを口にし
  しめじおいしい
 アラビアータは来ない
 水はぬるい
 アラビアータが来る、卓に、舌に
 にんにくが効きすぎており今日はキスを自重するべきか判断を下しかねながらグラスを傾けてさりげなく口をゆすげば歯間からカスが漂い
 ねとついた風味が残り
 水はぬるい
 最高の、
  うまさ
  は?
  いや、うまい
 さわやかな声音を意識しつつ鼻の頭に浮かぶ脂を意識しつつ
 店内を流れる
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