延滞料金/かいぶつ
 
かし君はもう
窃盗の件で満足したのか
幸せそうに寝息を立てながら
眠ってしまった
僕だけがひとり、物語の結末に
心の中で二度目の拍手を贈った

君はこの映画を迷いに迷って
択びぬいた一本なんだって
期待で胸をいっぱいにし
再生したけれど
君にはたぶん、見たいものなんて
初めから無かったんだ
本当に見たいものが
\380で見られるわけがないことなど
ずっと前から知っていたんだ

君はただ、そうやって
無防備になりたかったのだ
悲しさの中に美しさを見つけ
それを慈しむことは二の次で
週末の夜ぐらいは仕事や時間を忘れ
この街から、なるたけ遠ざかった
世界の話
[次のページ]
戻る   Point(3)