レヴィナスの芸術哲学−「存在の彼方へ」を読んでみる9/もぐもぐ
 
平線のない空間から剥離して私たちの目に飛び込んでくる。そしてそれらの間には何のつなぎ目もない。単純で絶対的な、裸の要素、存在の膨らみ、あるいは腫れ物。」(p112)
これだけ詳細に描写すればそれ自体が一つの作品になりそうな感じの念の入った描写である。そして、こうした芸術についての議論を受けて、レヴィナスはこの書における自分本来の議論である、実存者なき実存の探求へと進んでいくのである。
「この物質性は、濃厚で鈍いもの、粗いもの、ずっしりとしたもの、悲惨なものである。それは確かな内実と重さ、そして不条理をかかえ、粗暴な、しかも無情の現前だが、また同時に、慎ましく、裸で、そして醜くもある・・・存在の
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