レヴィナスの芸術哲学−「存在の彼方へ」を読んでみる9/もぐもぐ
 
をはじき返すことによって、間接的にその奥行きを醸し出す。別の世界、別の生があることを感じさせる。
あまりこういう言い方をすると、言語表現の罠というか、単なる観念の遊びに落ち込んでしまう危険もあるが、「対象」の「知覚」以前的なものだった「裸」に、今度は外衣が掛けられる。「裸」という「枠」の中に、私たちは「対象」の「知覚」を試みる。不定形な筈の「裸」の中に、私たちの内面が投影され、一定の<形>が浮かび上がってくる。そして、
「この対象たちの魂とは別に、芸術作品は総体として、その芸術家の世界と呼ばれるものを表現する。ドラクロワの世界があるようにヴィクトル・ユゴーの世界があるわけだ。・・・この事物たち
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