BadStripperKing/影山影司
 
っぺらいスーツに折り目だらけのネクタイ。年は三十路を過ぎたあたりか。
「嫁さんか?」
「嫁と子供二人。つらいぜ? ボーっとしてるだけの子供をあやすのは」
「違いねぇ。独り身で良かったよ」
 随分この通りも人が減った。ちょいと前まではこんな風にしゃべるのも難しいほど騒がしかったもんだが。今じゃ習慣化で出歩く奴ばかりが目に付きやがる。
「アンタ、随分まともそうだな。良いヤツ持ってんならわけてくれねぇか?」
 おっさんが耳たぶにチェーンでぶら下がったカプセルを人差し指で揺らす。中にあるはずの液体はすっからかんで、おっさんの目つきからすると随分摂取してないんだろう。「俺は必要ないんだよ。健太達
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