BadStripperKing/影山影司
 
太達が笑ってくれれば、俺も幸せなんだ。だから俺は要らないんだ。健太と良太にあげるために欲しいんだ。知ってるか? 健太はな小学生でな、野球が好きなんだよ……」
 そのままおっさんはふいと何処かへ歩いていってしまった。ぶつぶつと隣に向かって話し続けているが、そこには誰もいない。きっと習慣で外へ出て、つかの間正気に返ったんだろう。自分はまだ正気だと思って、なんのために歩いているのかも忘れてさまようのだ。だが、このまま風を浴び続ければそう遠くないうちに返って来れない所まで行っちまう。
 おっさんはまだぶつぶつとつぶやいている。車の走らない道路のど真ん中、「俺がしっかりしないとなぁ」と繰り返しながら。
[次のページ]
戻る   Point(0)