傷跡/小川 葉
 
とだった

お正月は
ストーブでお餅を焼いた
お餅は焦げながらふくらんで
やがて破れた
そのあたりがおいしいと
誰かが言ったけど
それが誰だったかかなんて
誰もが忘れてしまった

いとこが奥さんと
子供たちを車に乗せて
いったいどこに行ってたんだろう
帰り道
凍った道の上に
乾いた新雪が積もったせいで
後ろの車に追突されたけど
怪我もなく無事だった
そのことを思い出す
けれどもあのひどい雪道を
どこに行って帰ってきたかは
誰も知らないことになっている

田んぼのいたるところに
建物が建ちならび
新しい島があちこちに浮かぶ
ひさしぶりにおとずれた
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