子供ではないのだから/鈴木
 
に生島先輩は恨みを忘れた。過呼吸にて聞き取り不明の叫びを発しながら一升瓶を振り回す阿修羅様とどのようにコミュニケーションを取ったものかという問題で、判断を誤れば殺されていた。殺されていたらば僕もRからせっつかれることなく、この文章も書かず、世の快楽を安穏と享受できるのだが結果はご覧のとおり。恵は必ず右手を壁について靴を履く。左手でノブを捻る。扉が閉じる。
 よかった。忘れちゃったかと思った。
 午前十時、正午にS駅で待ち合わせ。眠る時間も起き上がる意欲もない。三人目になるとかなり透けて扉の暗緑さえ見える。青い生地にラベンダーがうっすらと重なったキャミソール、鼻をつく香水、アナスイだかキクスイだ
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