夜のナイフ、君はとても美しい。/ブライアン
 
ワゴンをローンで買った。あの日、大声で叫んだ声は、夜の闇に溶けてしまったはずだった。けれど、彼はそれを信じようとはしなかった。アコードワゴンの運転席の窓を開く。時速120キロ。彼は窓の外へ大声で叫ぶ。あの日の声に追いつこうとしていた。けれど、今叫んだばかりの声にだって追いつくことは出来ない。彼はアクセルを強く踏みつける。スピードが上がる。後ろからパトカーのサイレンが鳴る。パトカーは声をあげる。彼は舌打ちをする。せめて、とシートベルトを急いで締めた。急速にスピードは落ちた。道路わきに車は止まる。彼の叫び声は遠くへ走り去ってしまう。
 酒、買ってくっから、と言ったままあの日帰ってこなかった友人は、ア
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