青を、青を、「青を泳ぐ。」/Rin.
 
一人ずつの名前を呼んでくれて、私たちは物体Xを恐る恐る受け取った。透明の袋の中には、通知簿・子どものころの写真などが入っていた。蝉の死骸なんかを入れていた人もいて、なんだか価値ある剥製のように思えた。それに比べるとなんと平凡なものを入れたことか。これでは思い出せなくて当然である。当時話したことすらなかった男子生徒と、
「蝉だ〜!」
「キャア〜!!」
そんな言葉を交わして、私は時の力を思い知った。袋のなかには全員共通の封筒が入っていた。
「開けてみろ、覚えているか?」
先生が机に腰掛けてにやにやしている。みんなで一斉に開けると、あちこちから歓声があがった。写真だった。それぞれが、それぞれの
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