ステーション/佳代子
 
いと思った
車窓は1枚の皮膚であり私の目はフイルムだった
発車まであと7分
ホームの混雑が増してきた
少女がいる
階段の手摺りにもたれ片手でさらりとした髪撫でながら
手にしたコーラに視線を落としていた
字幕のないスクリーンから声が見えてくる
身を屈め時々頷く青年の後ろ姿は
何かを説得しているのかもしれない
発車まであと5分
少女の潤んだ赤い目と口角が歪む
青年は襟元からのぞいていた革ひもを引いた
黒のトレーナーの下からは緑色の曲玉が出てきた
少女は儚げな笑顔でシルバーの髪留めを外した
長い髪がザンと落ちて月が欠けるように顔を覆う
発車まであと2分
青年の曲玉と少女
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