ステーション/佳代子
少女の髪留めが互いの手の中で交わった
あと あと 1分20秒
心臓の脈打つ音が早く大きくなる
車窓が熱く飴のように柔らかくなって
ああ 私シンクロしている
奇跡は待たないで!
後悔するから・・・・
あと 50秒
その時 青年は素早くキスをした
大きな目を見開いて立ち尽くす少女に
笑顔で電車のドアを指さした
デッキに立ったと同時に発車のベルが鳴る
幕が下りるようにドアが閉まる
奇跡は 待たないで・・・・
私も そうでありたかった
どうして駅前なんかで別れたんだろう
後悔するから・・・・
後悔 してる
もう いつ会えるのかわからないのに・・・
動き出した電車の車窓に顔を寄せれば
通りすぎた青年の顔と別れた人の顔が重なり
冬ざれの田園の風景に吸い込まれていく
感傷旅行・・・・つぶやきながら
胸の中のカメラにそっとカバーを被せる
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