光量/渡邉建志
 
そうとする。すこしだけ遠くの人。

とても遠くの人のことを思い出す。わたしときみや、いまといつかを、どこかわからない場所でひとり、一本の糸でつなぐ実験をしている人。でもこれは愛しているのではなくて憬れているんだと思う。

すこしだけ遠くの人のことをきちんと考えてみる。きみ、と呼びかけてみる(わたしのなかで)。わたしがきみに恋をしているというのは1+1=2と同じぐらいの確からしさだ、と園部駅で父の車を待ちながら思う。わたしは恋をやたらとするひとだけれど、そしてそのたびにそのひとを世界遺産みたいに思うのだけれど、きみはそれなら宇宙遺産だと思う。あの人と同じにおいがするひとを久しぶりに見た。あの
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