ミカさん/亜樹
た。
そのため、僕は心の中で、彼女のことを勝手にミカさんと呼んでいる。ミントの香りのする人だから。
「そりゃあ、水商売の女じゃないのか」
と、同僚は言った。
そうかもしれない。けれども、どうも自分の中のイメージと合致しないのだ。
ミカさんは、そういった夜の街の華やかさや気だるさとは無縁の人だと、なぜか勝手に思っている。
その日も、ミカさんは洗濯物を干していた。
月の大きな夜だった。
いつものように、自分はただその家の前を横切る。
と、ふとミカさんが顔を上げた。
月を見ている。
なんとなしに自分も足を止めて、同じように見上げてみた。
月の大きな晩だった
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