九月/おるふぇ
 

明日の歌になれ

最近、たまに記憶が飛ぶ
物忘れもちょっとあるけれど
思い出せる
今はそう九月
まだ九月





花は落つ
町外れのとある教会の庭先
紫の花がひらりと落ちる
恋人を亡くした女性はほぼ毎日のように
決まって同じ時刻に現れる
何を祈るのか
何を願うのか
庭先の枝に花はもう少ない
敬虔なる唇や睫毛は美しく
ステンドグラスから差し込む
赤や青や緑や白の光に照らされる
ああ、神様、神様…
女性は跪き
天を仰ぐ
わずかに震えた咽で
息を吸っては吐いて
一通りの行為を終えたら建物を出る

女性の悲しみを僕は知らない
誰も代わる
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