「愚痴」/広川 孝治
 
んでたはずなんだけど

それを目指して歩きはじめたはずなんだけど

そうだった

その人に追い付こうとしてここに足を踏み入れたんだった

でもうつむいて足元を見つめて歩いてるうちに

障害物をよけて進んでいるうちに

気がつくと人影が増えて

最初に求めていた人影は消えて

横を見てもこの道の端は見えない

延々と続く人波が埋め尽くし

もうここから逃れることはできないことを悟る

虹も夕焼けも美しい満月も見えないこの道に

僕は迷い込んでしまったのかな

歩き始めたあの道は

細くて険しくて

あの人しか歩いていなかったけど

その
[次のページ]
戻る   Point(1)