回覧車?/ブライアン
 
き出すことなどあるわけはなかった。闇は沈黙だった。そして、海はすべてを飲み込んでしまう。悪夢も喜びも、飛行機さえも。不快な気持ちが増してゆく。高速で移動する飛行機を、夜の海は飲み込んでいく。だが、夜の海には距離も、時間もなかった。飛行機の移動速度がはやかろうが、おそかろうが、海はすべてを飲み込むのだ。得てして、闇とは、海とは、そういうものなのだ、と。輝く観覧車は広がる海に臨む。観覧車のその一室。一組の恋人たちは夜を眺めている。思い出が海に飲み込まれてしまうことも知らずに。二人は遠くの船を指差す。わずかに光が点滅する船。海に浮かぶ船は、人類の最後の希望だった。何もかもを飲み込んでゆく海に、船は、ただ
[次のページ]
戻る   Point(1)