回覧車?/ブライアン
 
ただ一つ浮かんでいるのだ。船上では見えぬ波、見えぬ渦と戯れる乗組員たちがいた。双眼鏡で陸を除く。その先には輝く観覧車があった。人類の希望は、喜びをあらわに、安堵の息を吐く。この無言にして、空虚な友、夜の海と別れるときが刻一刻と近づいていた。船上は、輝く観覧車を見つめ、無言の喜びに満ちていた。言葉はすでに夜の海に飲み込まれてしまった。船上は静かだった。わずかにエンジン音が鳴り響いていた。耳を澄ませば、観覧車の二人の愛を語る声が聞こえてきそうなほどに。あと、一時間あまり。夜の海、静寂、沈黙を通り抜ければ、人々の語りつくされた声が聞こえてくる。観覧車から降り立った恋人同士が手をつなぎ、楽しかったね、と語
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